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子供が歯医者を怖がる時の対処法と、家庭での準備から段階的に慣らす工夫

子供が歯医者を怖がる時の対処法と、家庭での準備から段階的に慣らす工夫

お子様のペースと苦手な感覚に合わせる段階的な受診の考え方


お子様が歯医者さんをこわがるときは、苦手なことを整理し、おうちでの声かけと少しずつ慣らす方法を組み合わせるのが基本の対処法です。予約の話だけで泣いてしまう場合でも、すぐに処置へ進まず「いすに座る」「器具にさわる」といった小さな手順から始める方法があります。


この記事では、怖がる理由の整理から、こわさを強めない家での準備、泣いたときにやめるかどうかの目安までをお伝えします。あわせて、痛みや腫れがあって受診を急ぐ症状や、通う回数の見通しなど、前もって歯科医院へ伝えておきたいことをまとめました。ご家庭の事情に合った受診のしかたを選ぶ参考にしてください。


この記事の要点まとめ


  • 怖がる背景には、器具の音や口に触れられる感じ、前に受診したときの経験などがあります。苦手なことや感じ方の特性を整理して、歯科医院に伝えましょう。
  • 家では、具体的な声かけや絵本、ごっこ遊びをお子様のペースで少しずつ取り入れ、受診でできたことを認める方法があります。
  • 受診は部屋に入る、椅子に座るなど小さく進め、強い緊張がある日はやめることも考えます。痛みや腫れ、けががある場合は早めに相談し、通う予定も共有しましょう。


子供が歯医者を怖がるのはなぜ?音・口に触れられる感覚・過去の経験から整理


お子様が歯科医院を怖がる理由の多くは、予測できない音や感覚、過去に泣いた経験の記憶から生じており、単なるわがままではありません。年齢や発達の段階によっても反応は変わります。説明してから見せて行う、できたことを褒めるといった関わり方が役立つとされています。


怖さのわけを「音や感触へのこわさ」「前の受診の記憶」「感じ方のくせ」の3つに分けて見ていくと、そのあとの関わり方を選びやすくなります。


器具の音や口の中を触られる感覚が苦手なお子様の場合


歯を削る器具や唾液を吸い取るバキュームの音、口を開け続けること、口の中に器具が入る感覚は、「次に何をされるか分からない」という怖さにつながります。特に自分では見えない口の中で進む処置は、大人以上に強い緊張を招きやすいものです。


このタイプのお子様には、いきなり口の中へ器具を入れるのではなく、事前に音を聞かせたり、嫌なときは手を挙げるといった合図を決めたりする方法が検討されます1。これから起きることを予測できる状態に近づけることが、対処の基本的な方向性になります。


以前の受診で泣いた経験が「予約の話だけで泣く」につながる理由


前に歯医者さんで器具の音におどろき、口を開けるよう何度も言われて泣いたことがあると、歯医者さんという場所や予約の話そのものが、こわい思い出と結びつきます。そのため、受診の予定を聞いただけで園に行く前に泣き出すなど、行く前から不安が強まることがあります。


こうした記憶が残っているお子様には、むし歯の処置より前に「歯科医院に行ったけれど痛いことは何もされずに帰れた」という経験を積み直すことが、怖さを和らげる手がかりになります。


感覚の過敏さや発達特性があるときに知っておきたいこと


光や音、口の中への接触といった感覚の受け止め方に過敏さがあるお子様や、自閉スペクトラム症などの発達特性があるお子様では、慣れない環境への不安や協力の難しさが生じやすいとされています2。こうした場合、絵カードなどを用いた視覚的な手順の提示や、事前の慣らしなど個別に合わせた方法が検討されます2。


診断の有無にかかわらず、「特定の音が苦手」「口の中に水が入るのを嫌がる」といった傾向が分かっている場合は、事前に歯科医院へ伝えておくことで当日の進め方を調整しやすくなります。


家庭での声かけや絵本・ごっこ遊びは、かえって恐怖を強めない?

家庭での声かけや絵本・ごっこ遊びは、かえって恐怖を強めない?

家庭での声かけや遊びは、受診を無理に迫る言葉にならない形で取り入れれば、お子様の怖さを和らげる助けになります。事前の説明や器具を見せること、気をそらす工夫などが不安を和らげる方法として挙げられています。


一方で、励ましのつもりの言葉が緊張を高めてしまうこともあるため、声かけの内容と遊びの順序には工夫が求められます。


「痛くないよ」「泣いたら怒られるよ」は逆効果になりやすい?声かけのよくある誤解


お子様を落ち着かせようとして「何もしないよ」「痛くないよ」と言い切ってしまうと、実際に器具が口に入ったときに「嘘をつかれた」と感じ、歯科医院や保護者への不信感につながることがあります。また、「泣いたら先生に怒られるよ」といった脅しや、受診の何日も前から繰り返し歯科の話を持ち出すことも、かえって緊張を高めやすい行動です。


声かけを行う際は、年齢に合わせて正直に、かつお子様が自分で選べる余地を残す言い方が適しています1。たとえば「今日は鏡で歯を数えてもらうよ」「嫌なときは手を挙げて教えてね」と具体的に伝える方法です。また、保護者自身の緊張や焦りはお子様に伝わりやすいため、落ち着いた態度で接することもお子様の緊張を和らげることにつながります。


音や口に触れられるのが苦手な子への絵本・歯医者さんごっこの取り入れ方


口の中に触れられるのが苦手なお子様に対し、家庭でいきなり口の中を覗き込む「歯医者さんごっこ」を始めると、受診を迫られていると感じて負担になることがあります。遊びを取り入れる際は、お子様自身が主導できる順番で段階を踏むことがポイントです。


1. 絵本や動画で、歯医者さんの様子や流れを見てみる

2. ぬいぐるみの歯をみる「歯医者さん役」をお子様がやってみる

3. 手鏡を持って、自分の歯を見てみる

4. 仕上げみがきのときに、歯ブラシで歯を1本ずつ数える遊びをする


このように、まずは見るだけ・触れるだけの段階から始めます。もし途中で嫌がる様子が見られたら、その日はすぐに切り上げて無理に続けない引き際も大切です。


受診当日の持ち物と、登園前から泣かないための過ごし方


受診当日は、お子様がほっとできるお気に入りのぬいぐるみやハンドタオル、待合室で気をそらせる絵本などを持参すると、待ち時間の緊張を和らげやすくなります。着替えや唇の乾燥を防ぐリップクリームもあると便利です。


当日の朝は、園に行く前などに受診の話を何度もくり返さないようにします。予約の時間は、おなかがすいているときやお昼寝の時間をさけ、機嫌がわりあい落ち着いている午前中などを選ぶのが一般的です。受診のあとには公園に寄るなど楽しい予定とつなげ、処置ができたかどうかではなく、「診療室に入れた」「いすに座れた」といったがんばったところを具体的にほめるようにします。


ポイント

「痛くない」と言い切らず「歯を数えるよ」と正直に伝え、遊びは絵本などで様子を見るところから始めて、お子様が歯医者さん役になる遊びへ進めると緊張を強めにくくなります。


段階的な慣らしは何回くらい必要?泣いてしまったら中断してよい?

段階的な慣らしは何回くらい必要?泣いてしまったら中断してよい?

歯科医院に慣れるまでに必要な回数は、お子様の年齢や過去の経験によって異なるため、一律に何回と決まっているわけではありません。基本となるのは、入室・着席・器具に触れるといった小さな段階を一つずつ進め、泣いて先へ進めない日は無理に続けないという考え方です13。


診療室に入る→椅子に座る→器具を見て触る、慣らしの段階例


お子様は一度でも歯科医院で嫌な思いをしてしまうと、怖がって行きたがらなくなることがあります。そのため、一般的な小児歯科の対応では、無理に診療台へ乗せて処置を始めるのではなく、まずは歯科医院の環境に慣れる時間を設けます13。具体的な段階の例は以下の通りです。


  • ステップ1:待合室や診療室に入り、歯科医師やスタッフと挨拶をして帰る
  • ステップ2:診療台の椅子に1人で、または保護者と一緒に座ってみる
  • ステップ3:お口を見る小さな鏡や、風・水が出る器具を手で触ってみる
  • ステップ4:器具から出る音を聞いたり、手のひらに風を当ててみたりする
  • ステップ5:口を開けて鏡を入れ、歯を数える練習やブラッシングを行う

1回の来院で進めるのは1〜2段階でも構いません。言葉で説明し、実際に見せてから体験してもらう手順を繰り返すことで、予測できない恐怖を減らしていきます1。


泣いた・座れなかった日に、続けるか中断するかを決める目安


受診当日に泣いてしまったり、診療台に座れなかったりした場合、診察を続けるか中断するかの判断が必要になります。緊急の痛みや腫れがない状態であれば、お子様の様子から次のように見極めるのが一つの目安です。


お子様の様子対応の目安理由・考え方
涙は出るが声かけに反応できる・合図を守れる短時間で区切って続ける1つでもできたことを確認し、褒めて終えることで自信につなげる1
体を強くよじる・呼吸が乱れる・パニックになるその日は中断して次回へ回す無理に進めると恐怖の記憶が強まり、次回以降の来院が難しくなりやすい
前回の来院時より明らかに怖がりが強まっている前の段階(触るだけ等)に戻るペースを落とし、落ち着いていられる段階まで戻ってやり直す

体を押さえつけての処置は、けがを防ぐためにやむを得ない緊急時を除き、歯科への恐怖を強める要因になり得ます。特に発達特性や感覚過敏があるお子様では、手順をさらに細かく分けて日を改める配慮が検討されます2。


通院回数の見通しと仕事・預け先の調整


慣らしのための通院が何回続くかわからないと、お仕事の早退や下のお子様の預け先を何度も整えられるか、不安に思う保護者の方は少なくありません。そのため、はじめての受診のときに「どのくらいのペースなら通えるか」を歯科医院とすり合わせ、むりのない範囲で次の予約を入れるのが現実的です。


歯医者さんを選ぶときは、お仕事帰りやお買い物のついでにも寄りやすく、通う負担の少ないところかどうかを見ておくと続けやすくなります。また、忙しくて何度も通うのが難しいご家庭に向けて、1回の診療時間を調整して通う回数や期間を相談できる歯科医院もあるため、進め方や条件を受診の前に問い合わせておくのも一つの方法です。将来、何度も処置をくり返さないで済む健康な歯を育てる視点からも、最初の段階でお子様とご家庭の両方に負担の少ない計画を立てることが大切です。


ポイント

1回の来院で1段階進むだけでも前進と捉え、強い拒否が見られる日は無理に続けず中断する判断が、結果的に歯科への慣れにつながります。


痛みや腫れがあるときは慣らしを待たずに受診すべき?予約時に伝えたいことは?


強い痛みや腫れ、歯ぐきのできものなどがある場合は、段階的な慣らしを待たずに早めの受診を相談したほうがよく、自覚症状がなければ慣らしを優先できます。お口の状態によって優先順位が変わるため、予約時に症状と不安な点をあわせて伝えることが大切です。


受診を急ぐ症状と、慣らしを優先できる状態の見分け方


園や学校の歯科健診で「むし歯の疑い」と指摘されたものの、本人が痛がっておらず食事や睡眠に支障がない場合は、まずは歯科医院に慣れることから始める余裕があります。一方、次のような症状が見られるときは、感染が広がっている可能性があるため早めの相談が必要です。


  • ズキズキとした痛みがあり、夜眠れない・食事をとれない
  • 頬や顎、歯ぐきが目に見えて腫れている
  • 歯ぐきに白いニキビのようなできもの(膿の出口)がある
  • 転倒などで歯が欠けた、グラグラしている、位置がずれた

なお、痛みがなくてもむし歯を長期間そのままにしておくと、内部で進行して歯を削る範囲が広がりやすくなります。歯は削る処置を繰り返すと段々と健康な部分が少なくなってしまうため、「まだ痛がっていないうちに相談だけ済ませておく」という動き方が、結果的にお子様の負担を減らすことにつながります。


緊急性があるときの進め方と、怖さへの配慮


痛みや腫れなどの緊急性を伴う場合は、保護者の方と相談しながら、慣らしよりも先に処置を行うことがあります。ただし、その場合でもいきなり大がかりな処置をすべて終わらせるとは限りません。まずはその日に必要な応急的な処置にしぼり、残りの処置は慣らしと並行して進めるといった進め方を、保護者の方と相談しながら決めることもあります。


麻酔が必要な場面では、注射の前に粘膜の表面へ軟膏タイプの表面麻酔を塗ったり、刺激を抑えるために超極細の針を用いたりするなど、痛みや怖さへの配慮が図られます。また、唾液の侵入を防ぎ、削りカスや薬液がお口の中に広がる不快感を減らすために、ゴム製のシート(ラバーダム)を状態に応じて使うこともあります。


予約時・初診で医院に伝えておきたい情報リスト


はじめての予約をとるときに、電話やWeb予約のメモ欄でお子様の様子を前もって伝えておくと、歯科医院のほうも当日の時間の配分や声かけを準備しやすくなります。次のことをメモして伝えておくとスムーズです。


  • お口の状態:健診で言われたこと、痛みがあるか、いつから気になっているか
  • これまでの受診:前の歯科医院で泣いたきっかけ(器具の音、口を開け続けること、水がたまる感じなど)
  • お子様の特性と落ち着く方法:感じ方の過敏さ、発達の特性、飲んでいる薬やこれまでの病気、手を握るとほっとするなどの工夫
  • 当日の希望と通院の事情:「初回は相談と慣らしだけにしたい」、保護者が付き添いたいか、下のお子様を連れて行けるか、通いやすい曜日や時間帯

「5歳で、前回の受診時に器具の音で泣いてしまいました。痛みはないので、まずは慣れるところから相談したいです」と一言添えるだけでも、初診の組み立て方は変わります。ご家庭だけで抱え込まず、まずは状況をお知らせのうえ、お気軽にご相談ください。


よくある質問


Q. 歯医者で気を紛らわす方法はありますか?


A. 処置中に天井やモニターで動画・アニメを見たり、音楽を聴いたりして視覚や聴覚の注意をそらす方法があり、非薬物的な不安軽減策として研究でも取り上げられています3。ご家庭からは、握っているとほっとできる小さなタオルやぬいぐるみを持参するのも一案です。また、「10数える間だけお口を開けよう」と終わりの見通しを数字で示すことも、緊張を和らげる助けになります。


Q. 子どもの歯が欠けた時はどうしたらいいですか?


A. 転倒などで歯が欠けた場合は、痛みがなくても神経に負担がかかっていることがあるため、早めに歯科医院へ連絡してください。欠けた破片が見つかった場合は、乾かさないよう水に浸して持っていくと、状態によっては変色せずに接着に使えることがあります4。唇や歯ぐきのけががないか、また吐き気・ぼんやりするなど頭を打ったサインがないかも確認しましょう。


Q. 床矯正で子供は後悔しますか?


A. 取り外し式の装置を用いる床矯正は、顎の成長を利用してスペースを整える方法ですが、決められた装着時間を守れないと予定通りに動かず、装置の違和感や管理の負担から「大変だった」と感じるケースがあります。お子様本人の協力度や歯並びの状態によって向き不向きが分かれるため、事前にメリットだけでなく装着時間や期間、他の方法との違いを確認しておくことが大切です。


Q. 自由診療の矯正にかかる費用と、初診の自己負担の目安はどのくらいですか?


A. 小児の矯正は公的医療保険が使えない自由診療で、一般的には取り外し式の装置を使う初期の矯正で数十万円程度かかることが多くあります。本格的な矯正まで進む場合や装置の種類によっては、さらに費用が高くなることもあります。初診の自己負担は、当院では検査や応急的な処置まで行った場合、3割負担で約3,000〜5,000円が目安です(子ども医療費助成制度の対象となる場合は自治体の定めによります)。


矯正は歯並びの状態によって費用だけでなく治療期間や通院の間隔も大きく変わるため、診察を受けて見通しを確かめておくことが大切です。


Q. 歯科医院で使われるフッ素と、工業用のフッ酸は同じものですか?


A. まったく別の物質です。「フッ酸(フッ化水素酸)」は強い腐食性を持つ薬品で、むし歯予防でお口に塗るフッ化物とは別の薬品であり、予防処置でお子様のお口に使うものではありません。なお、フッ化物を一度にたくさん飲み込んだときには、吐き気や吐くこと、おなかの不快感などが出ることがあります5。お口に入れる薬剤に不安がある場合は、使用前に遠慮なく歯科医師へご確認ください。


参考文献


1. Gizani S, Seremidi K, Katsouli K et al. Basic behavioral management techniques in pediatric dentistry: A systematic review and meta-analysis. Journal of dentistry. 2022. PMID: 36152953 / DOI: 10.1016/j.jdent.2022.104303

2. Tang SJ, Wei HL, Li CY et al. Management strategies of dental anxiety and uncooperative behaviors in children with Autism spectrum disorder. BMC pediatrics. 2023. PMID: 38049774 / DOI: 10.1186/s12887-023-04439-7

3. Kong X, Song N, Chen L et al. Non-pharmacological interventions for reducing dental anxiety in pediatric dentistry: a network meta-analysis. BMC oral health. 2024. PMID: 39342194 / DOI: 10.1186/s12903-024-04919-x

4. 歯、唇、口腔のケガと治療 | Science Tokyo 旧・東京医科歯科大学. https://www.tmd.ac.jp/dohs/155_58b950ef07b7b_58b954c943fc5/155_58b95694c567f/155_58b9572f9279e/

5. 3.フッ化物の安全性について – 長崎県ホームページ. https://www.pref.nagasaki.lg.jp/doc/page-332521.html


吉橋 直弥

歯科医師


錦デンタルクリニック

院長

吉橋 直弥

▶ 監修者プロフィール

経歴
北海道医療大学歯学部 卒業
東京医科歯科大学歯学部摂食機能構築学専攻生 終了
日本歯科大学大学院生命歯学研究科歯科臨床系専攻(歯周病学)卒業 博士(歯学)
昭和大学歯学部兼任講師
錦デンタルクリニック 開業
資格・所属学会
日本口腔インプラント学会
日本歯周病学会
日本歯科保存学会
日本口腔インプラント学会認定専修医
日本レーザー歯学会専門医